作者:マーティ・ケーガン

翻訳者:インターンスタッフ(アーテリジェンス)‍


新刊 EMPOWERED

前回の記事「 Product Leadership Is Hard(プロダクトリーダーシップは難しい)」では、エンパワーメントされたプロダクトチームで構成されたプロダクト組織において、強力なプロダクトリーダーシップを発揮するために必要なことを大まかに説明しました。

今回は、強力なプロダクトリーダーの例をいくつかご紹介したいと思います。

INSPIREDの第2版を執筆した際、私は業界を代表するプロダクトを支えた6人のプロダクトマネージャーの裏話を紹介しました。 結局、それらのストーリーをまとめたものを、最も人気で、最も私が誇りに思っている記事の一つであるBehind Every Great Productとして出版しました。

私がこの記事を誇りに思っており、またこのストーリーが共有された理由は、過去数年の間に多くの人々が、それらのストーリーに触発されてプロダクトのキャリアを追求し、変化をもたらす努力をするようになったと私に語ってくれたからです。

 

新刊 EMPOWEREDでは、プロダクトマネジメントのリーダー2人、プロダクトデザインのリーダー2人、エンジニアリングのリーダー2人、そして企業のリーダー2人の計8人の強力なプロダクトリーダーのストーリーを紹介しています。 私はそれぞれのリーダーと長年の付き合いがあり、彼らのリーダーシップを実際に見る機会もありました。

この新刊では、それぞれのリーダーがリーダーシップを発揮するまでの道のりや、価値観、強いチームを作るためのアプローチについて語ってもらいました。 私は、この新刊を通じて、より多くの人がこれらのリーダーを見出してくれることをとても楽しみにしています。また、彼らの事例が他のリーダーに刺激を与えることも期待しています。

この記事では、8人のリーダーを紹介するとともに、何がそれぞれのリーダーを特別にしたのか、私なりの考えを述べます。 この記事の最後に、これらの強力なリーダーたちが示す例から、皆さんに何を感じ取ってほしいかを紹介します。

 

アビッド・ラリザデ・ドゥーガン (Avid Larizadeh Duggan

アビットはエンジニアリングを学びましたが、プロダクトを学びたいと考えていました。私はeBayに早くから彼女を採用し、彼女が組織の中で急速に成長していくのを見守ってきました。そして、プロダクトの分野で素晴らしいキャリアを積み、最終的にはGoogle Venturesのパートナーとしてプロダクトチームへの投資やアドバイザーを長年務め、Code.orgを通じて女性やマイノリティのコード学習を支援してきました。

私は、Avidが非常に初期段階のスタートアップから非常に大規模な大企業まで、さまざまな組織で優れたチームを構築するのを見てきましたが、これを成し遂げたリーダーはほとんどいませんでした。

 

「リーダーは、強力な人材を集め、彼らが自由にアイデアを出し、協力して実行できるよう、注視する必要があります。 リーダーは、何をすべきか、なぜすべきかを明確にし、そして、それをどのように実行するのがベストかをチームに任せるべきである」

 

「リーダーは、チームに安心感を与える必要があります。各人が等しく賢いため、信頼関係が確立され、協力が自然に行われ、率直な意見を述べることができるため、相反する意見が頻繁に交わされ、快適に過ごすことができます。 そうすれば、良いアイデアが素晴らしいアイデアになるのです。チームメイトのベストを引き出すことで、自分自身のベストも見つかるのです。」

 

エイプリル・アンダーウッド(April Underwood

 

エイプリルもエンジニアとしてキャリアをスタートさせましたが、すぐにプロダクト会社やプロダクトチームの仕組みを十分に理解し、自分に適した場所はプロダクトマネジメントであると気付きました。

エイプリルは、事業開発、パートナーマネジメント、プロダクトマーケティングなども学び、また一般的にテクノロジー会社がどのように機能しているかについて、より幅広く理解するために働きました。

彼女が最終的にTwitter社でプロダクトマネジメントを担当した際や、後にSlack社の初代プロダクト責任者を担当した際に、この幅広い知識と経験を活かし、人材を発掘・採用して、私たちの業界で最も優れたプロダクト組織を作り上げることができました。

「私のキャリアをみると、さまざまな機能の役職に就きましたが、時には新しいスキルセットを身につけるために望んで選択した役職もあり、時には自分の力ではどうにもならない理由で希望しているプロダクトマネージャーの「役職」に手が届かなかった結果就いた役職もありました。」

 

「今、プロダクト幹部としての経験を積んだ今、こうしたサイドステップは、実は私の最も貴重な財産であることに気づきました。組織の垣根を越えた橋渡しをしてくれ、プロダクトは常に会社のミッションのためにあるのであって、その逆ではないことを肝に銘じています」。

 

リサ・カバノフ (Lisa Kavanaugh

リサは、HPでエンジニアとしてキャリアをスタートした後、まだ若かったAsk.comに入社しました。その後12年間、エンジニアとしてのキャリアを積み、最終的には、当時は非常に大きなグローバルエンジニアリング組織のCTOになりました。

しかし、リサを常に特徴づけているのは、人をコーチングし、成長させることへの情熱です。 エンジニアのリーダーが、会社から必要とされるリーダーになるためのサポートをしています。

特にエンジニアリングの分野では、新任のマネージャーのほとんどが、強力なエンジニアリングスキルを発揮して昇進していきます。 しかし、エンジニアからエンジニアリングマネージャーへの移行は、多くのリーダーにとって非常に困難な跳躍です。

 

「私はよく、絶対的に信頼でき、実行力で定評のあるテクノロジー幹部に会います。彼らは常に努力を惜しまず、約束を果たしてきました。多くの場合、約束を果たすためには劇的な成果を挙げなければいけませんでしたが、彼らはそれを成し遂げました。信頼できる実行力で知られ、それが彼らのアイデンティティの大きな部分を占めているのです。しかし今、そのリーダーは、個人的な努力ではスケールアップできないレベルにまで昇進し、チームはマイクロマネジメントされているように感じています。」

 

「ある行動からキャリアとアイデンティティを築き上げた人にとって、特に人に依存した形で自分が変わる必要があることに気づいたとき、これは本当に勇気のいることです。」

 

「リーダーの道のりは人それぞれですが、私は長年の経験から、リーダーが本当に向上したいと願い、他人を信頼することを学ぶために大丈夫だと信じて思い切る勇気を持てば、本当に自分自身を破壊し、会社が必要とする、従業員に相応しいリーダーになることができると感じています。」

 

デビー・メレディス(Debby Meredith

 

デビーとの付き合いは25年になります。 彼女はNetscape Communications社のエンジニアリングVPとして、ブラウザやブラウザベースのプロダクトを担当していました。 それ以来、彼女は技術系の企業に暫定的に参加し、エンジニア組織やシニア・リーダーシップ・チームにマジックをかけて、エンジニア、プロダクト、シニア・チームの間に信頼関係を築き、強固な仕事関係を確立できる人物としての評判を築いてきました。 この時点で、デビーは50社以上の企業のエンジニアリング組織の変革を支援しており、その多くが大きな成功を収めています。

 

「スタートアップの創業者やCEOの多くは、強力なエンジニアリング組織で仕事をしたことがなく、テクノロジーの役割や、プロダクトマネジメントやプロダクトデザインのパートナーとしてのエンジニアの必要な貢献について、根本的な誤解をしているリーダーを見かけることも少なくありません。」

 

「人はどんな会社でも心と魂です。そして、信頼はこれらの人々と効果的に連携でき、個々では想像できないほどのものを創造・達成することができます。これこそが、成功する企業のマジックなのです。」

 

オードリー・クレーン(Audrey Crane

オードリーは、長年にわたりデザイナー、ユーザーリサーチャー、デザインリーダーとして活躍しています。 幸運なことに、現代プロダクトデザインの真の先駆者の一人であり、かつてAppleとNetscapeの両方でデザインリーダーを務めた、ヒュー・ダブバリーのもとで働き、指導を受けながら技術を学んできました。

オードリーに初めて会ったとき、彼女の精神力と、純粋数学と演劇を学んだという異色の経歴にすぐに驚かされました。 彼女は制約の多い難しい問題を解決するために生まれてきたのであり、それば優れたデザインの本質であるのだと思いました。長年にわたり、オードリーは優れたプロダクトのデザインから優れたチームのデザイン(設立)へと移行していきました。

 

「私のキャリアの中で最もやりがいのある経験は、自分では気づいていない人の才能や適性を見極め、それが何であれ、彼らが優れていることを彼らに納得させることです。また、それぞれが情熱を持ち、得意とする分野で活躍しているチームで働くということは、一人の人間の力よりもはるかに大きなものの一部であることを意味しています。このようなチームは、所属する気持ちの面でも、成し遂げられることの面でも、変革をもたらします。」

 

クリスティーナ・ウォトケ (Christina Wodtke

人によっては生まれながらにしてコーチである人もいます。 人の可能性を引き出す手助けをすることに惹かれるのです。 まさにクリスティーナはそんなリーダーなのです。

クリスティーナは、アイリーン・オーをはじめとする業界の名士たちから技術を学びました。 クリスティーナは、シリコンバレーの代表的なプロダクト企業で、最初はプロダクトデザイナー、そしてデザインリーダーとして長いキャリアを積んできました。 

 

「良いデザインが生まれる場所をデザインするためには、プロダクトデザインをやめる必要があると気付きました。」

 

「それ以来、私は個人のグループからチームを作るようになりました。個人ではできないことも、チームならば奇跡を起こせるのです。」

 

7年ほど前、彼女はスタンフォード大学の教員となり、非常に恵まれた学生たちにプロダクトデザインとヒューマンコンピュータインタラクションを教えています。

 

「私はいつも、他の人の人生やキャリアに投資することで、恩返しをしようとしています。」

 

シャン・リン・マ(Shan Lyn Ma

私がシャン・リンに初めて会ったのは2009年、彼女はニューヨークで急成長しているギルト・グループの最初のプロダクト・マネージャーでした。 しかし、彼女の可能性を見出すのは簡単でした。 ギルトで4年間プロダクトチームを立ち上げた後、彼女は自分でスタートアップのオンライン・ウェディング・レジストリー&プランニング会社であるZolaを設立する準備ができていました。 

 

「共同創設者のノブと私はどちらも、イノベーションは信頼できる環境で働いている強力な人材で構成されたチームから生まれると信じていました。私たちは、そこで働く人々を大切にし、尊重する環境を提供することで、婚約したカップルが求めているような体験を提供することができると深く信じていました。 多くの創業者がこのようなことを言いますが、私たちはこれに会社を賭けていたのです。」

 

「私たちは、さまざまな視点が求められ、奨励される環境でこそ、イノベーションが生まれることを知っています。そのため、最初から、すべての募集職種において、多様性を明確な目標としました。スキルや才能の多様性はもちろんのこと、性別、オリエンテーション、教育、問題解決へのアプローチなどの多様性も求めました。これはイノベーションに役立つだけでなく、私たちのユーザーである婚約したカップルにはさまざまな趣向や組み合わせがあるので、あらゆるレベルで役立つと考えたのです。」

 

そして実際にその通りになりました。 Zolaは、ニューヨークのテックコミュニティの成功ストーリーのひとつであるだけでなく、働きがいのあるテクノロジー企業のひとつとしても評価されています。

 

ジュディ・ギボンズ(Judy Gibbons

 

私はこの職に就いて以来ジュディとは知り合いであり、彼女を友人と呼べることを光栄に思っています。 ジュディは、アップルやマイクロソフトで長年にわたって経営に携わり、アクセル・パートナーズではベンチャーキャピタルで活躍するなど、並外れたキャリアを持っています。 通常、企業は変革に真剣に取り組む必要があると分かっていても、それを達成方法が分からないため、この10年間、彼女はいくつかの取締役会のメンバーを依頼されています。 

取締役会のメンバーとして、ジュディはCEOをはじめとするシニア・リーダーシップ・チームと協力して、必要な変革を支援します。 彼女は、自分自身が何度も経験しているので、実体験に基づく知識と、不要な情報を見分けて問題の本質を見極める不思議な能力を持っています。

 

「リーダーは、組織が何を、なぜ達成しようとしているのか、明確で説得力のある目的と構想を確立し、伝える必要があります。また、お客様が誰なのか、何を求めているのか、どのように行動しているのかなど、トップがお客様に執着する必要があります。そして、解決策を見出すためには、プロダクトビジョンを実現する能力を強化し、有能なプロダクトマネージャーが率いる、問題解決に焦点の合わせた効果的なクロスファンクショナルチームが必要です。そしてこれは、明確な目標、説明責任、絶え間ない相互作用、そして継続的な学習を意味します。」

 

「私は取締役として、シニアリーダーにこのような原則や価値観を印象づけるようにしていますし、プロダクトチームに権限を与える必要があることを強調しています。これができなければ、進歩はほとんど見られず、多大な不満がたまり、必然的に、多大な努力とコストをかけて組織に連れてきた必要なデジタル人材が、より働き甲斐のある場所を求めて出て行ってしまうことになるのです。」

 

重要なポイント

 

これらのリーダーたちはそれぞれ個性的で、プロダクトリーダーシップへの道を歩んでいますが、私が最も興味深いと思うのは、彼らに共通するものがたくさんあるということです。

彼らは皆、強力で権限を与えられたプロダクトチームのマジックを経験し、自分が支援する組織でそのマジックを再現しようと努力しています。

彼らは皆、他人をコーチし、成長させることに尽力しています。 彼らは皆、基本的に人を信頼しており、支援した人の成功によって自分の成功を評価しています。

彼らは、一般的な人事マネージャーではなく、それぞれがプロダクトのプロフェッショナルであり、自分の立場から人々をコーチするために必要な基盤を持っています。

彼らは皆、自分たちの "プロダクト "は今や "人 "であることを理解しています。

彼らは皆、純粋に善良な人間であり、私たちの多くが一緒に働きたいと思うような人たちです。

私が知っている本当に強いプロダクト企業には、必ず強いプロダクトリーダーがいます。 そして、もしあなたの組織が、フィーチャーチームからエンパワーメントされたプロダクトチームへと変化することを望んでいるのであれば、強力なプロダクトリーダーシップが鍵を握っているということを私たちは学びました。 

これらのリーダーについて詳しく知りたい方は、クリス・ジョーンズと私が執筆した新刊の中で、リーダーのプロフィールを紹介しています。

EMPOWERED: Ordinary People, Extraordinary Products.


注記:この記事は、SVPG社 (Silicon Valley Product Group、https://svpg.com/) の制作記 事を、同社の許可を得て、アーテリジェンスのスタッフが無償で翻訳しています。本翻訳 記事の無断での複製・転載を禁じます。