作者:マーティ・ケーガン

翻訳者:インターンスタッフ(アーテリジェンス)


先日、私はロンドンで開催されたMind The Product Conferenceで基調講演を行いました。その中で私は、非常に優秀なプロダクトマネジャーがチームや会社にとって重要な役割を果たすことを、例を挙げて説明しました。 ほとんどの人が気づいた通り、私が例示した6つの事例はすべて女性でした。 私の考えでは、彼女たちのパフォーマンスがすべてを物語っているので、講演中にそのことについてはっきりとは名言しませんでした。  しかし、その後、多くの人から性別について質問を受けました(まだその記事を読んでいない方は、まずその記事を読んでいただきたいと思います。優れたプロダクトマネジャーに必要な特性を知っていれば、この記事の意味がより明確になります)。

 

基調講演の準備を始めたとき、私は35年以上にわたって数多くのテクノロジー製品チームと仕事をする機会に恵まれ、ユニークな視点を持っていることに気づきました。 そこで、自分が知っている「ロックスター」級のプロダクトマネージャーをリストアップしてみたところ、すぐにリストの半分以上が女性であることに気づきました。女性は一般人口の50%を占めていますが、テクノロジー・プロダクト・マネージャーの人口や、アメリカ企業全体を表す値ではありません。

 

私の観察は統計的に有意なものではありませんが、プロダクトマネージャーとしての女性の割合がこれほど低いのであれば、なぜこれほど多くの女性がこの仕事で卓越しているのだろうかという疑問がわきました。 彼女たちから学ぶべき何かがあるのだろうか? そして最終的には、より多くのプロダクトチームが、女性のプロダクトマネージャーを積極的に採用するべきなのでしょうか?

私は以前からこのテーマについて意見を持っていましたが、自分の考えを公にするのは今回が初めてです。 ここから先は、なぜ女性が最高のプロダクトマネジャーになることが多いのか、ということについての私の持論であることを先に述べておきます。 また、この記事全体が一般論に基づいており、私自身、以下に述べる各論に例外があることを知っています。 しかし、これらの理論は、人々が検討したり議論したりする価値があると思ってくれることを願って、公開しています。

 

私のことを知らない人のために最後に免責事項を書いておくと、私は男性です。 しかし、女性が同様のことを主張したら、利己的だと思われるかもしれないので、この方が議論をしやすいと思います。

だからこそ、性別を問わず、この話を受け止めてほしいと思います。 ここでは女性がもたらす利点に焦点を当てていますが、すべてのプロダクトマネージャーがこれらの特性から恩恵を受けていると強く信じています。

 

最低限必要なもの


誤解のないように申し上げますが、私は男女を問わず、プロダクトマネージャーが有能であるためには、賢く、創造的で、粘り強いことが必要だと強く信じています。 これは確かに高いハードルですが(有能なプロダクトマネージャーがいないことで苦しんでいるチームがあまりにも多いのです)、私はこれらの面で性別による違いはないと考えています。

 

この記事では、有能なプロダクトマネージャーとは何かということではなく、ただのプロダクトマネージャーと最も有能なプロダクトマネージャーとを分けるものは何かということをお話します。

 

注意:私はここで、これらの特徴が人をより良い人間にすると主張しているわけではありません。技術系企業のプロダクトマネージャーの仕事は非常に難しく、これらのスキルは成功する能力を大幅に向上させるということを主張しているのです。 また、これらのスキルや特性を身につける方法は、熟練したマネージャーやメンターからのポジティブで建設的なコーチングではなく、非常に辛いレッスンを通して身につけることもあるということを認識しておく必要があります。

 

バランスの取れた自我

私の見解では、女性の絶対的な強みは、バランスのとれた自我(エゴ)を持っていることだと思います。 それを私は「自信がありながらも控えめな人」と定義します。 自信過剰な女性は稀です。シェリル・サンドバーグのような有名な人物でも、彼女自身がその場で一番賢いとは思っていませんでした(明らかに賢いのに)。自信は成功するために必要な要素ですが、仕事において、その自信が最も力を発揮するには知らぬ間に傲慢になってしまったり、自信過剰にならないことが大切です。

 

有能なプロダクトマネージャーが失敗する主な理由の1つは、自尊心(プライドの高さ)によるものです。 プロダクトマネージャーは、チームの他のメンバーや、特に会社のアルファタイプの(目標達成意欲が高い積極的なタイプを一般的に総称する)リーダーとの関係に大きく左右されます。 プロダクトマネージャーは、意見の相違を個人的な侮辱として受け取らないことが重要です。

 

多くの女性はバランスのとれた自我を持っているので、自分への挑戦としてではなく、話を聞くことができます。これにより、たとえアルファタイプの男性とであっても、効果的に仕事をすることができます。 このバランスのとれた自己意識は、物事がうまくいったときにはチームを称賛し、物事がうまくいかなかったときには自分を責めるという女性の傾向にも表れています。

 

ここで言う例として、私が取り上げた6人の女性はいずれも、私の記事の読者が彼女たちのチームを十分に評価していないのではないかということを唯一躊躇っていました。

感情知能

先日、イランの核開発中止の交渉で重要な役割を果たしたキャサリン・アシュトン女史に関する記事の中で、感情知能とは、自分自身の感情を識別して管理し、他者の感情を察知して統率することで、信頼を築き、影響力を高め、全体としてより良い結果をもたらす能力であると定義されています。

 

それは一つのスキルではなく、優秀だが時に独断的なエンジニア、情熱的なデザイナー、テクノロジーを心から恐れたり、脅かしたりする経営者、怒っているお客様、そして変化を好まない多くの人々など、あらゆるタイプの人々や状況をナビゲートするために展開される多くのスキルなのです。

 

この感情知能はプロダクトマネージャーが人々と建設的に関わり、実際にその人が表現しようとしている根本的な問題や制約を特定するために耳を澄ませ、そして、様々な関係者にとって有効な解決策を見つけるために創造的に働くことを可能にします。

  

プロダクトの役割の多くは、人と制約の複雑さをうまく操り、お客さまと自社にとってよい解決策を導き出すことに集約されます。 このようなことを一貫して行うには、感情知能のスキルが不可欠です。

 

謙虚

謙虚であることは、バランスのとれた自我を持つことの結果であると言えるかもしれませんが、私はそれ以上のことだと思います。

 

 強いプロダクトマネージャーになるためには、常に自分自身と自分の判断に疑問を持つことが必要だと思います。 実際のところ、私たちは間違っていることが多いのです。 優れたプロダクトマネージャーは、それを理解し、受け入れています。 それを利用してさえいます。

 

男性の場合、何か間違ったことがあると、それを個人的に受け止めてしまうことがよくあります。 女性の場合は、自分の価値観と、特定のアイデアがお客さまに受け入れられるかどうかを切り離して考えられると感じます。 このような考え方や姿勢は、製品チーム全体に影響を与え、一貫したイノベーションを生み出すために必要な要素だと私は信じています。

 

これと関連して、あるいはこれがあるからこそ、女性のプロダクトマネージャーは自己啓発に真剣に取り組んでいると感じます。 女性は、より自然に成長マインドセットを持っています。女性とのコーチングセッションでは、弱点やその対処法について率直に話し合えるため、生産性が向上する傾向にあります。 大抵男性のプロダクトマネージャーは、彼らには我々が取り組むべき弱点があるのを納得させるのに苦労します。

スタミナ

特に大企業でテクノロジー製品の開発に携わったことのある人なら、それが一種のマラソンのようなものであることを知っているでしょう。

 

常に伝道し、鼓舞し、問題を解決し、会社のあらゆるレベルで気難しい性格の人々を扱い、変化に抵抗する人々に対処しながら、粘り強く数ヶ月、場合によっては数年単位での継続を可能にするためには、高い水準の体力・スタミナを必要とします。

 

これにはある種の忍耐が必要ですが、決して屈服することはありません。 男性のプロダクトマネージャーは、あまりの苦労の長さにイライラしてしまい、ついには冷静さを失ってしまうことがよくあります。 誤解しないでいただきたいのですが、誰にとってもイライラすることですが、私は女性の方がはるかに長く我慢できると感じています。

 

これが、なぜテクノロジー分野のプロダクトマネージャーで成功しているのは女性が多いのか、という私の仮説です。 バランスのとれた自我(エゴ)、強い感情知能、謙虚さ、そして並外れたスタミナ。

女性のプロダクトマネージャーを雇う

私の考えに同意していただけるのであれば、これらの結果として、非常に重要なことを認識していただく必要があります。

 

プロダクトマネジャーにもっと女性を雇用したいのに、プロダクトの仕事に応募してくる女性の数が少ない、と私に訴えてくる企業がどれほどあるでしょうか。

 

ここで問題なのは、プロダクトマネジャーの求人を出しても、多くの優秀な女性は実際には自分に資格があるとは思わず、そもそも応募してこないということです。

 

例えば、「テクノロジー業界で4年の経験があること」という求人内容の場合、一般的に男性は1年以上の経験があれば応募しますが、女性は5年以上の経験がなければ応募しません。 誇張していると思われるかもしれませんが、そんあことはありません。

 

問題の一部は、ジョブ・ディスクリプション自体にあります。 多くの人は、何が必要かということについて、時代遅れの、あるいはあまりにも単純化された偏見を持っています。 

 

コンピュータサイエンスの学位は必須ではありません。 技術をよく理解し、それをどう応用して問題を解決するかを理解していることが必要です。 MBAは必須ではありません。 ビジネスの仕組みをよく理解していることが求められます。 ここで(カンファレンスで)ご紹介した6人の女性のLinkedInプロフィールを見てみてください。

  

私が特に適していると思う女性にプロダクトマネージャーに応募すべきであると納得させるためには、実際に会いに行って個人的に交渉する必要があると気づきました。その際、私には才能を見抜く能力があると信頼してもらい、そしてたとえ彼女たちが自分の力がまだ十分でないと考えていたとしても、そのこと自体がプロダクトマネージャーの仕事に適している理由のひとつであると説明します。

  

最高の女性プロダクトマネージャーは、その仕事をすることを考えたこともないような人であることが多いのですが、考え方や仕事の進め方、行動の仕方などが自然に適しています。彼女たちを見つけてください。積極的に採用しましょう。彼らを訓練し、投資しましょう。そうすれば、あなたのプロダクトチームも、あなたの会社も、そして最終的にはテクノロジー業界全体も、より良いものになるでしょう。


この記事は、SVPG社 (Silicon Valley Product Group、https://svpg.com/) の制作記 事を、同社の許可を得て、アーテリジェンスのスタッフが無償で翻訳しています。本翻訳 記事の無断での複製・転載を禁じます。